人はね、人の言う通りになんて動きませんよ。柄本明の言葉

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(1)

誰かに何かを伝えようとした途端、そこでぶつかり合い、「なかなか伝えられないもんだ」と勉強するわけでしょう。
表現しようとして逆に表現できないことに気づくこともあるし。
結局、ずっとその繰り返しなんですよ、人生って。
人間は欲望のかたまりで絶対満足なんてしない。
不満と不安を抱えて、ずっと生きていく生き物でね。

(2)

人はね、人の言う通りになんて動きませんよ。
例えば「そこからあそこまで物を動かして」と言われたことだって、それを実際にやる瞬間、自分の肉体を通るわけだからどうしたって己が出てしまう。
自我が出る。
そことの闘い、葛藤みたいなものはありますよね、いくら台本のままでいいと思っていても。

(3)

人間の大事な何かっていうのは、アマチュア性にあると思うんです。
これをやることでお客が来るとか、お金がもうかるとか、そういう邪念のないところで、純粋にとにかくやりたいから突き進む、突き詰めていく。
そういうアマチュア性があるからこそ、プロとしての仕事ができるんじゃないかと。

(4)

僕は、職業っていうのは、人を狂わすって感じがしてならないんだよね。
社会はよく「自分の職業に誇りを持て」とか言うでしょ。
その感覚が何とも人を狂わせるっていう気がしてしまう。
自分のやっていることはすばらしいと思った瞬間に、人はダメになってしまう。
とくに役者なんてそうでしょう。
以前、ある芝居仲間が「自分の職業にはコンプレックスを持つべきだよね」と言ったことがあったのですが、なんて頭のいい人なんだろうと思いました。

(5)

人間って結局、何かの真似をしているに過ぎないわけじゃないですか。
“これは一から俺が作った”なんて、そんなはずないんだもん。

(6)

僕に限らず、人間は、生涯自分の欲望と付き合っていかなきゃいけない。
芝居をしていても、“これでいい”なんて思うことはないから、情けないよねぇ(苦笑)。
だからやっぱり、悔しいまま死んでいくんだろうな。
ファッファッ。なんか暗いね(笑)。

(7)

結局“何かをやる”ってことは、“何かができない”ってことに、気づくだけじゃないですか。

(8)

たとえばプロデューサーから『面白い芝居作りましょう』って言われたら普通すぎて、僕はその先に希望が持てないんです。
『つまんない芝居作りましょう』って言われたほうが、“面白いって何?”“つまんないって何?”って考えるでしょ?
そのときも、子供たちに街へ出て、『絶望って何だと思いますか?』っていろんな人に訊いて回らせたら、たばこ屋のおばあさんが笑いながら、『毎日が絶望だねぇ』って言ったんだって(笑)。
その辺から子供たちは、絶望ってことについて考え始める。
一人、生意気な子供が、『絶望は希望と繋がってるんだ』って言うから、『そうだな、最初に希望があって、絶望になるんだよな』と僕が言ったら、『違う違う、最初にあるのが絶望だよ!』って返してきてね(笑)。
その通りだって思った。

(9)

“希望を持て”っていうのは、“あなたはちゃんとしてなくちゃいけません”と同義だと僕は思う。
でも、ちゃんとしてなきゃいけないのって、結構つらいよね。
僕が映画館を好きなのは、あの暗闇なんです。
暗闇の中で、“覗き”という罪を犯しているような気分になれたのに、最近は、シネコンとか、明るく健康的になっちゃって、僕はあまり面白くない。

(10)

結局人は、何かに支えられてないと不安なんでしょうねぇ。

(11)

役へのアプローチはいろいろありますよ。
でもね、結局、脚本なんですよ。
与えられた本の中で、それぞれの俳優が考えればいいこと。
書かれているセリフを言う仕事ですから。
医師だからどう演じるってものはない。
だってわれわれの仕事は不自然なことをしているんですよ。
それを“自然に”というのが所詮、無理なんです。
不自然さをバネにして、物語として立ち上がってくればいいんですけどね。

(12)

そんなに僕に仕事は来ないですよ(笑)。
俳優って職業はフリーなので、常に潜在的に仕事を求めている。
だから、来た仕事を受けているだけ。
人間、どんな仕事でもやるときは頑張るでしょう?
別に俳優だからって特別じゃないんですよ。

(13)

映画や演技が本当に何かを伝えられるなら、世界に戦争は起こらないよ。
繰り返すけど、俳優が取り立てて素晴らしい職業ってことはない。
だいたい食えないもの。
やらない方がいいよ(笑)。

(14)

深川監督の『60歳のラブレター』を観たとき、助監督経験が長い人が撮った作品だと思った。
熟練の域というのかな……。
それで今回、本人に会ったら、若い兄ちゃんなんで『アンタ撮ったの? あれ』って思わず聞いちゃった(笑)。
深川監督は指示も的確で、面白い現場でしたね。
頭の中でイメージがしっかり出来上がっているんです。
映画の現場は……やっぱり楽しいですね。

(15)

もうアナーキーに言えばですよ、脚本ができたら、そこに書かれてあることを言えばいいんです。
そういう仕事ですから(笑)。

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