にんげんは、幸せな日々から順に忘れ去っていくのかもしれない。作家 重松清の言葉

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(1)

人間って不思議なもので

人との関係が煩わしくて

ストレスを感じるのに

人との関係の中で

ストレスを解消する。

(2)

犯罪なんかは別にしても、

「正しい」「間違い」ということを100%で

言い出すようになってしまったら、

ものすごく窮屈になる。

(3)

人生はたくさんのわかれ道があり、

Aを選んだら100%正解で、

Bならば間違い、

ということは絶対にない。

(4)

優しいひとほど

途方に暮れてたたずむことが

多いんじゃないかな、って。

だって、

「優しい」という字は、

ひとが憂うって書くんだものね。

(5)

「憧」という字が

りっしんべん(心)に童でできているように、

憧れのひとは、

人生に少々くたびれ気味のオヤジの心を

一瞬にして少年時代に戻してくれる。

(6)

薄っぺらな紙切れ一枚、

署名と捺印、ちょっとした偶然と、

幸運や不運と、勇気や絶望。

家族なんてつくるのも壊すのも簡単で、

だから婚姻届も離婚届も

向こうが透けるくらいに薄っぺらで、

でもこんなに重たい。

(7)

思い出は、

楽しいものだけを

選んで増やすわけにはいかない。

むしろ、

忘れたくても

忘れられない記憶というのは、

嫌なもののほうが多いような気もする。

(8)

誰かを憎んだり、

恨んだりするときの顔って、

かなしいよ。

ふつうの『悲しい』じゃなくて、

哀れなほうの『哀しい』。

(9)

「こたつ」を「おこた」と呼ぶのは、

母と同じだ。

「お」を付けて丁寧に呼ぶと、

ヒーターの熱が届かない背中も、

ほんのりと温もってくる気がする。

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(10)

「次の五つの絵の中で、

仲間はずれのものはどれですか?」

といった類の問題。

選別と排除の能力に長けた

子どもが試験でいい点を取るなんて、

ちょっと怖くないですか?

(11)

寂しがってないから、

寂しいんだ。

(12)

薄れかけた記憶の、

その薄れ具合が心地よい。

にんげんは、

幸せな日々から順に

忘れ去っていくのかもしれない。

(13)

負けたことのない教師って

ほんとうに生徒にとっていい教師なんでしょうか。

教師のいちばん大事な役目は、

生徒に勝ち方を教えるんじゃなくて、

負けてもくじけない気持ちを

教えることじゃないんですか。

(14)

おふくろは優しい。

どんなときでも優しい。

(15)

帰れる場所があるのなら、

帰ったほうがいい。

重松清(しげまつ きよし、1963年3月6日 – )、日本の小説家。 少年時代吃音で悩んでいたことも後に作品に反映させている。早大教育学部卒。『ビフォア・ラン』(1991年)で作家デビューし、『ナイフ』(1997年)、『定年ゴジラ』(1998年)などで注目される。『ビタミンF』(2000年)で直木賞を受賞。主に現代的な家族の姿をモチーフとし、日常の中に潜む社会的問題を浮き彫りにする。少年少女の悩める心、成長の姿を扱った作品への評価も高い。



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