カメラを置いていこうと思ったのは、
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それがあると撮ることに気を取られて、
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旅を楽しめなくなっていることに
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気付いたから。
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その瞬間、目の前にあるものを、
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レンズ越しではなく体全体で感じたい。
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残せる安心感よりも、残せない緊張感。
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今を油断したくない。
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実際、旅の途中に
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カメラを持って来ればよかったと後悔もしたけれど、
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撮影しながらの旅よりも深く刻まれたと思います。
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「インスタ映え」。
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もはや日常さえも撮影ベースで動く人が増えまし た。
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「映える」かどうかが大きな基準となった今、
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日常を切り取る行為は、
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後々振り返るためというより、
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「いいね」を獲得するため。
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ナイトプールや潮風のないビーチ。
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撮影のためだけに入るレコード店。
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日常なのか非日常なのか、
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「映える」ところへ東奔西走。
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今を共有したい、報告したいというよりも、
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「いいね」が欲しい。
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それはきっと、不安の裏返し。
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自分の人生が幸せだと実感したい。
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みんなに幸せだと言われたい。
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そんなことは周囲が決めることではないのに。
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彼女たちは、
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インスタ映えする棺桶を選ぶのでしょうか。
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それぞれの価値観ですから、
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「い いね」と言われる人生を否定はしません。
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でも、私は、いらない。
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人の「いいね」よりも、
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自分の「いいね」がひとつあればいい。
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そもそも、人生にいいも悪いもない。
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こんな私は、
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人生をこじらせているのでしょうか。
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― ふかわりょう (タレント)
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