有名な科学者のお話をご紹介しましょう。
この科学者はこれまで、医学分野においていくつもの飛躍的な成果をあげてきました。
ある新聞記者が彼にインタビューして尋ねました。
「博士のずば抜けた創造力はどうやって培われたのですか」
その質問に対する科学者の答えはこうでした。
すべて、私が5歳のときに母から学んだ教えがもとになっていると思います。
まだ小さかった私が、大きなミルクビンを冷蔵庫から出そうとした時のことでした。
つるっと手が滑り、ビンがキッチンの床に落ちてしまいました。
文字通り、床はミルクの海と化しました。
キッチンに入ってきた母は、怒鳴りつけたり、説教をする代わりに、こう言ったのです。
「ロバート。派手にやってくれたわね。
でも、こんなにすごいミルクの海なんて、めったにお目にかかれないわ。
起こってしまったことはもう元に戻せないから、このミルクの海でしばらく遊ぶ?
後で、一緒に片付ければいいわ」
そして、本当に私は母とミルクの海で遊びました。
しばらくすると、母はこう言いました。
「ねえ、ロバート。
こんなふうにいっぱい汚しちゃったときはね、お掃除してキレイにするのよ。
スポンジとタオルとモップのどれを使う?」
私はスポンジを選び、母と一緒にこぼれたミルクを掃除しました。
掃除が終わると、母がまたこう言いました。
「いい?さっきはね、小さな手で大きなビンを運ぶ実験に失敗したってことなの。
さあ、裏庭に行ってビンにお水を入れましょう。
どうしたら、ビンを落とさずに運べるか、試してみるのよ」
幼い私はこの実験から、大きなビンであっても、両手で口のところを持てばちゃんと運べることを発見しました。
この有名な科学者は、これ以来、失敗を恐れなくなったと言います。
同時に、失敗とは、何か新しいことを学ぶきっかけに過ぎないことを知りました。
これこそ、科学実験の真髄です。
もし仮に実験が不成功に終わっても、重要な何かを学べるわけですから。
世の中のすべての両親が、この科学者の母親のように子どもと接することができたら、どんなに素晴らしいことでしょう。