(1)
昼は夢 夜ぞうつつ
(2)
孤独に徹する勇気もなく、
犯罪者にもなれず、
自殺するほどの強い情熱もなく、
結局偽善的に世間と
交わって行くほかはなかった。
(3)
男というものは、
少々陰険に見えても、
根性はあくまでも
お人よしにできているものだ。
そして、
女というものは、
表面何も知らないねんねえのようであっても、
心の底には生まれつきの陰険が
巣くっているものだ。
(4)
二、三歳のころは、
ひどくおしゃべりで、
物真似などが上手だったそうだが、
物心つくにしたがって、
あまりしゃべらなくなり、
独りで何か空想して、
夕方など町を歩きながら、
声に出してその空想を
独白するくせがあった。
(5)
学校は地獄であった。
そのために、
私は社会生活を嫌悪し、
独りぼっちで物を考える癖が、
ますます嵩じて行った。
(6)
戦前の人嫌いが、
戦後人好きになり、
いろいろな会合に
進んで出るようになったのは、
一つは隣組や町会で人に慣れたのと、
もう一つは戦争中
多少酒が飲めるようになったせいである。
(7)
たとえ、
どんなすばらしいものにでも
二度と
この世に生れ替って来るのはごめんです。
(8)
結局、
妥協したのである。
もともと生きるとは
妥協することである。
(9)
恋愛ばかりでなく、
すべての物の考え方が
誰とも一致しなかった。
(10)
現世(うつしよ)は夢 夜の夢こそまこと