正しいことが人を幸せにするとは限らない。伊坂幸太郎作品の言葉

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(1)

人生ってのはエスカレーターでさ。

自分はとまっていても、

いつのまにか進んでるんだ。

乗った時から進んでいる。

到着するところは決まっていてさ、

勝手にそいつに向っているんだ。

だけど、みんな気がつかねえんだ。

自分のいる場所は

エスカレーターじゃないって思ってんだよ

― オーデュボンの祈り

(2)

正しいことが

人を幸せにするとは

限らない

― オーデュボンの祈り

(3)

好きで貧乏人に生まれてくるやつはいないし、

好きで醜男に生まれてくるやつもいない。

ハンディキャップは不平等に負わされる

― オーデュボンの祈り

(4)

金で買えないものはない。それだけだ。

私は何でも買おうと思えば買えるし、

買いたいものは買う。

他人の人生や愛情も、

想像力や生活の平和すら買える

― ラッシュライフ

(5)

不景気、不景気と騒いでいるがな、

これだけ長い間不景気なんだ、

それがこの国の標準の状態なんだろう。

子どもがテストで一度満点を取ったからと言って、

その後五十点程度しか取っていなければ、

その子の実力は五十点だろ。違うか?

この経済状態だってずっと続いてればそれが普通なんだ。

昔のまぐれ当りを待ちつづけている

馬鹿ばかりの国に先はない。

だいたい、失業率にしたところで、

全人口分の仕事がこの世の中に用意されていると

誰が決めたんだ?

少なくとも私は決めた覚えはないぞ。

誰もが仕事にありつけると無根拠に思い込んでいるだけだろ?

人口が多くて、全員分の仕事はない。簡単なことだ

― ラッシュライフ

(6)

予期せぬことが起きたら撤退する。

それが長生きの基本だ

― ラッシュライフ

(7)

誰だって自分だけは

オリジナルな人間だと思っているんだよ。

誰かに似ているなんて

言われるのはまっぴらなんだ。

俺は、ジョン・レノンに似ている

と言われるのだって我慢できないね

― チルドレン

(8)

黄金時代が現代であったためしはない。

いつだって黄金時代は、

その時代には気がつかず、

後になってはじめて、

「あの時は良かったな」と分かるもの、

そういう意味なのだろう。

もしくは、

まだ見ぬ未来にだけ存在している、

ということか。

― チルドレン

(9)

そもそも、

大人が恰好良ければ、

子供はぐれねえんだよ

― チルドレン

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(10)

「世の中って理不尽ですよね」

気が利いているようでいて、

実のところ何も言い表していない、

という台詞を私は言ってみる。

こういう空虚な言葉が、

間を埋めることはよくある。

人間が好んで使う手法だ。

― 死神の精度

(11)

太陽が空にあるのは当たり前のことで、

特別なものではないよね。

でも、太陽は大事でしょ。

死ぬことも同じじゃないかって思うんだよね。

特別じゃないけど、まわりの人にとっては、

悲しいし、大事なことなんだ

― 死神の精度

(12)

人間はね、年取ったって、

大して成長しないんだって

― 死神の精度

(13)

幸せか不幸かなんてね、

死ぬまで分からないんだってさ

― 死神の精度

(14)

結局さ、いざという時はやる、

なんて豪語している人は、

いざという時が来てもやらない

― 砂漠

(15)

自分の皮膚で触れた部分が

世界なんですよ

― 砂漠

(16)

募金箱を抱えている人が、

実は詐欺師かもしれない、なんてね、

そんなことまで勘ぐってどうするんですか。

寄付してやればいいんですよ、寄付してやれば。

偽善は嫌だ、とか言ったところでね、

そういう奴に限って、

自分のためには平気で嘘をつくんですよ

― 砂漠

(17)

今、目の前で泣いている人間を

救えない人間がね、

明日、世界を救えるわけがないんですよ

― 砂漠

(18)

学生時代を思い出して、

懐かしがるのは構わないが、

あの時は良かったな、オアシスだったな、

と逃げるようなことは絶対に考えるな。

そういう人生を送るなよ

― 砂漠

伊坂幸太郎(いさか こうたろう、1971年5月25日 -)、日本の小説家。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。2002年の『ラッシュライフ』で評論家に注目され始め、2003年の『重力ピエロ』で一般読者に広く認知されるようになった。それに続く『アヒルと鴨のコインロッカー』が第25回吉川英治文学新人賞を受賞。多くの作品で、舞台設定や登場人物などがリンクしている。また、登場人物の中には、同名でありながらも別人格として、複数の作品に登場する者もいるのが特徴。


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