宇宙からは、国境線は見えなかった。宇宙飛行士 毛利衛の言葉

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(1)

日本人の特性の中で、

私が一番アピールしたいのは、

相手の身になって考えることができる

「思いやり」の心です。

(2)

「俺が、俺が」と

自己主張するのではなく、

常に相手を思いやる。

これは日本人が持つ

文化のひとつだと思います。

(3)

スペースシャトルや

国際宇宙ステーションのように、

生死を共にするような

極限の環境に身を置いた際

一番大事なのが思いやりです。

一人ひとりが最高の能力を発揮して

初めて困難に立ち向かえるという時、

仲間が何を考えているかを先んじて理解し、

その人が

能力を発揮しやすいようにしてあげる。

逆に自分が能力を発揮するために

相手がサポートしてくれる。

宇宙でミッションが成功するかどうかは、

この思いやりによる

人と人のつながりにかかっています。

(4)

宇宙から日本を再認識すると同時に、

地球の「小ささ」にも思いが及びました。

1周するのにわずか90分。

地球を外から見れば

空気も水もつながっている。

そんな小さなところで、

国同士が争うことはないんじゃないかと。

(5)

宇宙飛行士は

お互いが思いやりの心を持ち、

限られた食料や

空気、水を分け合っています。

地上にいる人はこんなに自然が溢れ、

水や空気は

十分にあると思っているかもしれません。

でも、ちょっと離れれば地球は小さく、

そこに70億人もいる。

実は地球自体がまさに「宇宙船地球号」で、

宇宙ステーションと同様の

ぎりぎりの環境に近づいているのです。

それなのに

資源の奪い合いをしていたら、

共倒れになってしまう。

(6)

21世紀のいま、

ヒトゲノムが研究し解明され、

人間の遺伝情報が詰まった

4つの塩基の組み合わせで、

いくらでも人間という生物が

変わることが分かった。

神様がつくり、

人間は特別だと思って進歩させてきた科学が、

人間は他の生命と変わらない、

ということを証明することになったんです。

(7)

挑戦することに、

年齢は関係ないですよ。

(8)

精神的な年齢に、

老いも若いもないんです。

(9)

多くの人から、

何かにチャレンジするときに、

気持ちが続かないと聞きますが、

それは、心の底から、

おもしろがらないからじゃないでしょうか。

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(10)

飛行士はだいたい、

「地球が見たい」って答えるそうです。

でもわたしは太陽。

(11)

月は太陽に照らされて光る。

他者があって自分があるという、

その深みに惹かれたのです。

(12)

宇宙船から見る下弦の月。

あれは一生忘れません。

人とつながってこそ、自分がある。

人生もそうありたいですね。

(13)

宇宙飛行士の場合は、

想定内のことはやれるのが当然で、

想定外のことを

どれだけやれるかが面白い部分です。

宇宙空間では小さなミスでも

命取りになりかねませんから、

地上ではありとあらゆる事態を

想定してトレーニングします。

(14)

想定外のことが起きます。

そんなときいかに対処するかが

一番ワクワクするところです。

なぜそんなふうに考えるのかといえば、

訓練で散々失敗させられるからです。

いい意味で失敗に慣れ、

それを糧に新たに挑戦する

気持ちを持てるからだと思います。

(15)

宇宙からは、国境線は見えなかった。

毛利衛(もうり まもる、1948年(昭和23年)1月29日 – )、宇宙飛行士、科学者。科学者としての専門は真空表面科学、核融合炉壁材料、宇宙実験。化学者でもある。宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙環境利用システム本部有人宇宙活動推進室長、京都大学大学院特任教授、東京工業大学大学院総合理工学研究科連携教授、公益財団法人日本宇宙少年団団長。アラバマ大学客員教授、筑波大学客員教授、日本科学未来館館長なども歴任した。


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