成熟するためには遠回りをしなければならない。小説家 開高健の言葉

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(1)

臆病はしばしば性急や

軽躁と手を携えるものだが、

賢明は耐えること

―耐え抜くことを知っている。

(2)

ウイスキーは人を沈思させ、

コニャックは華やがせるが、

どうしてか

ぶどう酒は人を

おしゃべりにさせるようである。

(3)

外国語が読めても

外国人のことはわからない。

外国語が話せても、わからない。

外国に住んでも、わからない。

外国人を知るには文学によるしかない。

それも一流の文学ではなく、

二流の文学である。

(4)

生まれるのは、偶然

生きるのは、苦痛

死ぬのは、厄介。

(5)

無駄をおそれてはいけないし

無駄を軽蔑してはいけない。

何が無駄で

何が無駄でないかはわからないんだ。

(6)

遠い道をゆっくりと

けれど休まずに

歩いていく人がある。

(7)

文学は

ファッション・ショウじゃない。

古いも新しいもない。

進歩も退歩もない。

わかりきったことじゃないか。

(8)

かくて、

われらは今夜も飲む、

たしかに芸術は永く人生は短い。

しかし

この一杯を

飲んでいる時間くらいはある。

黄昏に乾杯を!

(9)

朝露の一滴にも

天と地が映っている。

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(10)

何かを得れば、何かを失う、

そして何ものをも失わずに

次のものを手に入れることはできない。

(11)

月並みこそは黄金。

(12)

海を愛するのは

賢者であり、

山を愛するのは

聖者である。

(13)

成熟するためには

遠回りをしなければならない。

(14)

私は

人間嫌いのくせに、

人間から離れられない。

(15)

顔のヘンな魚ほどうまいものだよ。

人間もおなじさ。

醜男、醜女ほどおいしいのだよ。

開高健(かいこう たけし/かいこう けん、1930年〈昭和5年〉12月30日 – 1989年〈平成元年〉12月9日)、日本の小説家。組織と人間の問題を扱った『パニック』『裸の王様』や、ベトナム戦争取材の体験をもとにした『輝ける闇』などがある。また趣味の釣りについて世界各地での体験を綴ったエッセイ『フィッシュ・オン』『オーパ!』などでも知られる。


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