人間であることの宿命

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この生の時間の中で

多くの体験をしたあげく、

わたしたちは人生を短いとか長いとか、

富んでいるとか貧しいとか、

充実しているとか空しいとか判断している。

しかし、

自分の眼が

どこまでも遠くを見ることがないように、

生身の体を持った

わたしたちの体験の範囲と距離は、

いつも限られているのだ。

耳も、すべての音を聞くことはない。

手も、すべてのものに触れることはできない。

それなのに、

大きいだの小さいだの、

固いだの柔らかいだの、

と勝手に判断している。

さらに、

他の生き物についても勝手に判断している。

つまり、

最初から限界があるのに、

自分たちの判断が間違っているかもしれない

ということに気づかないでいる。

これが、

人間であることの大小さまざまの宿命なのだ。

― 『曙光』

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