愛するということは、その人を信じようとする意志にほかならない。小説家 遠藤周作の言葉

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(1)

 

手を握られた者は

自分の苦しみや痛みが

このつなぎ合わされた手を通して、

相手に伝わっていくのを感じる。

だれかが、

自分の苦しみや痛みを

わかち持とうとするのを感じる。

 

 

(2)

 

人間にとって一番辛いものは

貧しさや病気ではなく、

それら貧しさや病気が生む

孤独と絶望のほうだ。

 

 

(3)

 

愛の第1原則は「捨てぬこと」です。

人生が愉快で楽しいなら、

人生には愛はいりません。

人生が辛く、みにくいからこそ、

人生を捨てずに

これを生きようとするのが

人生への愛です。

だから自殺は愛の欠如だと言えます。

 

 

(4)

 

誰かを愛するということは、

その人を「信じよう」とする意志にほかならない。

もしくは信じる賭けをなすことにほかならない。

 

 

(5)

 

人間らしく生きるために

七分は真面目人間、

三分は不真面目人間で生活するのが

「生きる智恵」と言うべきであろう。

 

 

(6)

 

自分が弱虫であり、

その弱さは芯の芯まで

自分に付きまとっているのだ、

という事実を認めることから、

他人を見、社会を見、文学を読み、

人生を考えることができる。

 

 

(7)

 

人間生活にはムダなものがかなりあるが、

そのムダなもののために情緒が生まれ、

うるおいができ、

人の心がなごむようなものがある。

 

 

(8)

 

苦しいのは

誰からも愛されぬことに耐えることよ。

 

 

(9)

 

人生の出来事の意味は

その死の日まで誰にもわからない。

 

 

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(10)

 

いまの若い世代にもっとも欠けているのは

「屈辱感に耐える」訓練である。

この訓練が行われないで、

そのまま社会から大人扱いにされると、

おのれのすること、なすことは

すべて正しいと思うようになる。

 

 

(11)

 

敵も味方も

自分らが正しいと思えばこそ

戦が起るのだ。

 

 

(12)

 

情熱を持続するには危険が必要なんだ。

ちょうど恋愛の情熱がさめるのは

安定した時であるのと同じように、

人生の情熱が色あせるのも危険が失せた時だよ。

 

 

(13)

 

魅力あるもの、

キレイな花に心を惹かれるのは、誰でもできる。

だけど、

色あせたものを捨てないのは努力がいる。

色のあせるとき、本当の愛情が生まれる。

 

 

(14)

 

黄昏の砂漠は歩きづらいが、

振り返ると波打ちぎわに

自分の足跡が、自分だけの足跡が、

一つ一つ残っている。

アスファルトの道は歩きやすいが、

そこに足跡など残りはしない。

 

 

(15)

 

人間はみんなが、

美しくて強い存在だとは限らないよ。

生まれつき臆病な人もいる。

弱い性格の者もいる。

メソメソした心の持ち主もいる…

けれどもね、

そんな弱い、

臆病な男が自分の弱さを背負いながら、

一生懸命美しく生きようとするのは立派だよ。

 

遠藤周作(えんどう しゅうさく、1923年〈大正12年〉3月27日 – 1996年〈平成8年〉9月29日)、日本の小説家。12歳の時カトリック教会で受洗。評論から小説に転じ、「第三の新人」に数えられた。その後『海と毒薬』でキリスト教作家としての地位を確立。日本の精神風土とキリスト教の相克をテーマに、神の観念や罪の意識、人種問題を扱って高い評価を受けた。ユーモア小説や「狐狸庵」シリーズなどの軽妙なエッセイでも人気があった。日本ペンクラブ会長。日本芸術院会員。文化功労者。文化勲章受章。

 



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