もしこの世の中に、
風にゆれる「花」がなかったら、
人の心はもっともっと、
荒んでいたかもしれない。
もしこの世の中に
「色」がなかったら、
人々の人生観までも
変わっていたかもしれない。
もしこの世の中に
「信じる」ことがなかったら、
一日として安心してはいられない。
もしこの世の中に
「思いやり」がなかったら、
淋しくて、
とても生きてはいられない。
もしこの世の中に
「小鳥」が歌わなかったら、
人は微笑むことを
知らなかったかもしれない。
もしこの世の中に
「音楽」がなかったら、
このけわしい現実から
逃れられる時間がなかっただろう。
もしこの世の中に
「詩」がなかったら、
人は美しい言葉も
知らないままで死んでゆく。
もしこの世の中に
「愛する心」がなかったら、
人間は誰もが孤独です。
― 中原 淳一(1913 – 1983)